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2013/03/10

建材NEWS

【ファイアライト】CIAL鶴見 後編

実は、どうしてもファイアライト®をと希望したのには、もうひとつ理由がありました。駅の大階段の上にあたる吹き抜け部分には防火ガラスを使わなかった場合、防火シャッターを設置することになります。万一火災が起こった場合には、駅から避難するお客様の頭上で防火シャッターが降下することになります。見慣れない光景と聞きなれない音に囲まれる、その恐怖は回避したかったのです。

さらに駅ビル内部に目を向けると、2階で『ファイアライト プラス®』を使った場所は避難経路に面していますが、普段はガラス越しに駅が見渡せる見通しのいい空間です。でも、ここにシャッターが降りるとガラス面は壁となり、普段とは違う閉ざされた空間では行き場を見失うのではないでしょうか。ただでさえ、パニックになりがちな非常時には、できる限り普段見慣れた日常空間の中で避難していただけるようにすることが、何よりも大切だと考えます。その意味でも、避難経路に『ファイアライトプラス®』を採用させていただいたことは効果が大きかったと思います。

『CIAL 鶴見』は「心通いあうくつろぎの我が家」をコンセプトとした地域密着型の駅ビルです。階高6mを活かし、鶴見の魚河岸や活気ある市場をイメージしてデザインした1階『御菜市場』をはじめ、鶴見ならではの文化を意識した、今までにない駅ビルを目指しました。とりわけ、鶴見には禅宗の大本山總持寺があることから、館内随所に「禅文化」に基づくデザインを取り入れています。禅カフェや書籍のある5階は『眼睛(がんぜい:物事の本質や勝ちを見抜く眼)小径』とし、總持寺の透かし彫りモチーフを用い、飲食フロアである6階は『典座(てんぞ:禅の教えの中で「食」を司る役割)小径』と名付け、坪庭も配しました。屋上には禅の庭である枯山水の『坐月(ざげつ)庭』を設け、EVホールで滝の水音を聞いていただく場所から、商業空間の雑踏を離れ、静けさの中に自分を見つめる大人の空間として位置付けました。
でも実際には、屋上庭園『清風苑』を子供が駆け回り、『坐月庭』の砂紋には子供たちの足跡がそこかしこに見られ、「数時間ごとに整えてもダメなんです」というスタッフの方々の悲鳴も耳にしています。『CIAL 鶴見』が地域の皆様に愛され、安全で安心な駅ビルとして利用していただいている証(あかし)として、とても嬉しく感じています。
(株式会社JR東日本建築設計 青木容子)

※掲載内容は発行当時のものです。

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