ブックタイトル環KAN建材ニュース77

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環KAN建材ニュース77

House NA( 東京都)2011年―その間をつなぐ建築。 高校時代からアインシュタインが好きで、得意科目は物理。東大の理科一類に入ったものの、授業がとてつもなく難しくて、挫折しました(笑)。それで、工学部の建築学科を専攻したのですが、建築のことをろくに調べもせず感覚的に決めました。知っている建築家といっても、ガウディだけ。中学生の頃、父の書棚にあった彼の作品集を手に取って、「建築って、モノをつくる仕事なんだな」と感じました。僕は幼稚園の頃から図画工作の類いのモノをつくることが大好きでしたが、ガウディを見るまで僕の中では「建築」と「モノをつくること」は結びついていなかった。 新しい考え方や概念で世界をとらえることができるクリエイティブな学問―これが物理に興味を持った理由。物理と建築は、通じるものがあると、僕には思えました。大学で建築の勉強が始まると、すぐにその面白さにはまった。建築は僕に向いていたようですね、深く考えないで選んだわりに…。 大学を卒業してからはどこの設計事務所にも入らず、時々コンペに応募しながら6、7年ほど気ままに過ごしました。「焦りや不安はなかったですか?」と聞かれることがありますが、「何かを成し遂げねばならない」というプレッシャーがあればキツかったかもしれません。僕は、何かを成し遂げていないことを不安に思うより、日々の小さな発見を積み重ねていくことが楽しかった。 日々は無理でも、1週間にひとつくらいは「これって何だか面白い」という発見があるものです。「この考え方は新しいんじゃないか?この発想を突き詰めていけば、次のコンペは獲れちゃうかも?」という半ば思い込みに近い手応え(笑)。3日後物理と建築。その間に見出した共通点。建築思考を深めた、ポスト大学卒業時代。か1年後かは分からないけれど、僕はもっと面白いことを発見するだろう。そんな自分自身への期待があったので、挫けなかったのだと思います。また、ひとつの思いつきが次の思いつきにつながって少しずつ建築に対する了見が広がっている実感もあり、この間に、建築思考の根幹が形成された気がします。 建築は結局、僕らが生活する場所ですよね。僕にとって建築の楽しさのひとつは、「住むこと」と「住むための場所」について根源的なところまで戻って考察し、新しく、かつ根源に根差しているものを発見することです。文明が進化して文化が多様化しても、人間の生活そのものは何万年も前から変わっていない。寝て/起きて/食べて/人とコミュニケーションをとるということですね。だから、常にゼロにまで戻って「住むこと」について考える必要がある。すると、根本的には変わらないはずなのに、なぜか新しい発見があって、そのことに僕は喜びを感じる。そんな発見をしていくことが、建築を続けていくモチベーションになっています。 とはいえ、連綿と続いてきた建築の歴史で先人たちが様々な試みに挑戦してきたのに、いまさら新たな発見があるのか?そんな想いが一瞬頭をかすめるものの、小さなことでも何か新しいことは見つかるものです。「新しい発見をしてやろう!」と気負い込まず、たとえ、昔だれかが考えていたことであっても、「今日、僕はいろんなことを考えて、これを見つけた」という喜びを自分で見出せればいい。たとえば、5年前に自分で試みてうまくいかなかったことでも、いまもう一度チャレンジすると、違う結果になったりする。一度やったらそれで終わり、ではありません。 事務所のスタッフは、外国人を含めて25人ほど。彼らと一緒に考えるようになったことでも、多様なアイデアが生まれています。プロジェクトも増えてきて、いまは30くらいが同時に動いている。こうなると訳が分からず、ほとんど溺れているようですが…。溺れながらもがいているうちに後押しされて、さらに知らない地平に流れつく。そういう感覚は嫌いではなくて、流れのままに身をまかせようと。価値観にこだわりすぎたり、しがみつくより、この状況を受け入れる。基本的に、楽観主義なんです。自らの可能性を積み重ねていける喜び。04