ブックタイトル環KAN建材ニュース79

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概要

環KAN建材ニュース79

3年で独立することを自らに課し、日常のすべてを学びに。  いろいろなコンペの表彰会場で出会ったのが、隈研吾さん。隈さんに「またお前か」と(笑)。事務所に入るよう誘われました。その頃の隈さんは、栃木県の那珂川町馬頭広重美術館に代表されるような、地域性を大切にして地元の職人と対話しながら素材からつくっていく作風にシフトされていた。素晴らしいと思いました。というのも、僕の父は地域経済学者で、金沢や鎌倉などを渡り歩き、地域が自立的な経済圏を構築することを研究対象としていた。そんな薫陶を受けていたことから、隈さんの方向性に共感し、入所を決めたのです。 最初の1年ほどは実務ではなく、アイデアコンペや施主への提案担当を割り振られました。独立の期限を決めていた僕としては、早く実務をやりたい。ジレンマを感じて辛かったですが、今になってみれば、仕事を獲るためのプレゼン能力が鍛えられたと思います。隈さんは著書も多くて饒舌な印象があるかもしれませんが、「背中から学べ」という人です。なぜあんなにも施主に愛されるのか。どうやって仕事を獲っているのか。普段の何気ない会話も注意して聞き・見て・盗んで…という感じで、隈さんの日常のすべてが学びになりました。 隈さんの何気ない日常会話に出ていたレストランやホテルにも行ってみました。もちろん、そんな高級な店へ頻繁に行くお金はないのですが、背伸びをしてでも体験しておくことは大切です。いいレストランを知らずして、いいレストランはつくれません。あるいは、感覚の経験。心地いい風というのは、どんな風がどう吹いてくると心地よく感じられるのか。気持ちのいい肌触りとはどんなものか。明文化しにくいものまで繊細に感じ取れる力は必要だし、さまざまな感覚を身体的な体験として蓄積しておくことも、すべて建築につながっています。 体験でいえば、少年時代に金沢や鎌倉の豊かな自然の中で遊び回って木々や土などに身近に親しんだことや、父が連れて行ってくれた寺社仏閣で日本の庭園や建築の素晴らしさ・美しさを感じたことも大きい。美しさというのは、生活と分離して存在しているのではなく、長い年月をかけながら人間が共有する感覚だと思います。僕は、野山や文化的な場所で美に対する繊細な感受性を広げることができた。父は父の好きに行動していただけで僕を教育する気持ちはなかったのですが、今思えばありがたいですよね。東急プラザ表参道原宿 (東京都)なかがわまちばとうひろしげ