ブックタイトル環KAN建材ニュース79

ページ
6/24

このページは 環KAN建材ニュース79 の電子ブックに掲載されている6ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

環KAN建材ニュース79

 自然と人が良好な関わりを結ぶことが、自分の中に通底しているテーマ。内外の境界を融かしてくれるので、ガラスはよく使います。太陽光が入ってくる過程で起きるさまざまな事象にも惹かれる。単純に「透明感がほしい」ということではなく、むしろ、不均質性や不連続な現象から生じるランダムさがつくれる素材として魅力を感じています。つくり手の想像を超える体験を生み出してくれるから、ガラスが好きなんですね。建築というのは動かないものですが、刻々と変化するガラスはそこに居る人の心象に変化をもたらしてくれる。つくり手の僕でさえ驚いたりして、それを楽しみにしています。 使う人や訪れる人にとっての固有の体験を喚起する建築についても、真摯に取り組んできました。その体験を生み出すには、素材の役割が大きい。既製品にない場合は素材の開発から始めますが、これは本当に大変で…。品質や性能・製造工程・工期・費用などあらゆるリスクを検証しないといけなくて、考え出したら不安で眠れなくなる(笑)。 その分、思い通りのものができた時には、固有の現象・固有の体験が生まれます。かつ、関わってくれた職人さん一人ひとりの固有の体験づくりに深く関わる素材のあり方。顔が思い浮かぶ。その向こうにはその人たちの生活の基盤となっている工場があって、ひとつの素材の完成が、次の商品開発につながるかもしれない。建築を通じて、地域の職人さん・地域の産業・地域の文化が活性化して、循環型の魅力的な経済をつくることができれば――1棟の建物でできることは限られていますが、一助にでもなれたら素晴らしいと思っています。 元々地元の素材はよく採用しているのですが、持続可能な社会システムをつくるという視点も重要だと思います。たとえば、杉林に囲まれた地域なら、杉丸太を使って建築空間をつくる試み。曲がっていたりヘンなところに節があっても、加工せず一本一本の個性として活かす。製材しないのでゴミも減らせます。 徳島県の中山間部にある上勝パブリックハウスのプロジェクトで、特徴的なエピソードがありました。上勝町は2020年までにゴミを出さない暮らしを目指すゼロ・ウェイストを宣言しているので、建築でも廃棄物をできるだけ減らしたり再利用するよう努めました。過疎化地域で廃屋も多いのですが「空き家から建具を集めてほしい」と声を掛けたら、たくさん集まった。パブリックハウスの高さ8mの窓をそれらの建具で構成しました。かつてそれぞれの家庭で明かりが灯っていた頃の記憶を集合させて、町を照らす希望の行灯になるようにと想いを込めました。上勝 Public House( 徳島県)05 KAN79