ブックタイトル環KAN建材ニュース79

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概要

環KAN建材ニュース79

中村 拓志(なかむら ひろし)1974年東京都生まれ。明治大学大学院理工学研究科博士前期課程修了。1999年隈研吾建築都市設計事務所入所。2002年NAP建築設計事務所を設立。主な作品は、狭山の森 礼拝堂(2016年アルカシア建築賞 最高賞、2014年JIA優秀建築賞)、RibbonChape(l 2016年BCS賞、2015年Leaf Awards大賞)、東急プラザ表参道原宿( 2013年JCDデザインアワード 大賞)、録ミュージアム(2012年JIA環境建築賞 最優秀賞)など多数。Optical Glass House( 広島県) 那須Tepee( 栃木県)ふるまいが内包する言語化できない豊かさ。巨大なイデオロギーに替わる小さなふるまいの集積。 僕は「ふるまい」という言葉をよく使います。設計とは、かっこいいカタチをデザインすることではありません。人の営みと建築設計というものは密接に関わっているはずだし、その関わり合いそのものを設計すべきだと思う。ふるまいの積み重なりが、人の営みです。人だけではなく、自然にもふるまいはあります。自然は静的に見えるだけで、動的なものです。たとえば、木々にも生命の躍動や営みがあって、循環している。そういうものをきちんと見つめて設計する心がけ――それを僕は「ふるまいのデザイン」と呼んでいる。ふるまいには、言語化できない豊かさやコミュニケーションが含まれているのです。 僕はいわゆる作家性を打ち出す建築をつくらないので、建築家の先生方から「君の建築は一貫性がない。わかりにくい」といわれることがあります。僕にとって、主役はあくまで使う人・地域や周辺の自然環境。それらが最適化できるよう、対象に寄り添いながら建築をつくっていくのですが、そこに僕の存在や主義・主張を強く押し出す必要はない。その結果、作家性に乏しいといわれるならば、それでも構いません。自分で信念を持ってやっていることなので。 イデオロギーが無くなっている今の時代、共有できるものをつくり出していくことが、建築の大事な役割になってきていると思います。インターネットの世界だと「つぶやき」や「いいね!」など、小さなふるまいが積み重なって新しい共同体が生まれている。その感覚を、建築に採り入れたいと考えています。小さなふるまいを集積していくことで、安心感や居心地のよさ、自分の居場所が見つかるといったパーソナルな親近感が持てる。笑顔が自然と浮かぶ快適な場所であれば、他人同士でも会話が始まったりする。それを大規模建築・公共的な建築で実現したい。できる、と思っています。06