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概要

環KAN建材ニュース80

ガラスには、温度が上がると膨張する性質があります。たとえば、普通のガラスコップに熱湯を注ぐと割れる現象。これはコップ内側のガラスが湯温で膨張するのに対し、外側は膨張しにくく、内側と外側にかかる力が不均衡になるために割れてしまうのです。ファイアライトRは「結晶化」の技術により、温度が上がると縮む性質の結晶を析出させることで、膨張力の打ち消しに成功。熱膨張係数ほぼゼロ、つまり、熱衝撃の影響を受けないガラスなのです。【結晶化のプロセス】分相ガラス( 常温) 核形成( 800℃…1時間) ファイアライト?( 900℃…1時間)ファイアライトの結晶化前の原ガラスは成形後、均一な液体構造ではなく、一つの液体の中にもう一つの液体が約0.005ミクロンの大きさで混合分散した構造を持つ、分相ガラスとなっています。このガラスを800℃まで加熱すると分相ガラスの中からジルコニア、ジルコニア・チタニアなどの極めて小さい結晶核が析出してきます。900℃まで温度を上昇させると結晶核のまわりにベータ・石英型の結晶が成長します。この結晶は温度が上がると縮む性質があるため、膨張係数はほぼゼロとなるのです。熱膨張率ゼロのヒミツ1988年、日経アーキテクチュアなどの建築誌に掲載した広告。バブル最盛期など、当時の時代性を感じさせる。 ファイアライトRの源流は、1962年に開発された「結晶化ガラス」にあります。本来ガラスは非晶質で結晶を持ちませんが、特殊組成のガラスを再加熱し、ガラス内部に微細な結晶を均一に析出させることで、熱膨張係数がほぼゼロに。急激な温度変化に弱いというガラスの常識を覆し、「熱衝撃(サーマルショック)に非常に強い特性」が備わりました。 結晶化ガラスはガラスの可能性を広げるマテリアルとして期待される一方で、大型板ガラスとして供給するには、極めて高度な技術革新が必要でしたしかし諦めることなく、溶融炉の改良・大型化、成形技術の改良などを繰り返し、ついに安定した生産・供給体制を確立。高品質な結晶化ガラスを世に出す基盤を整えたのです。 340社以上が出展した’88ジャパンショップ(第17回店舗総合見本市)で来場者の注目を集めたのが、新商品の超耐熱結晶化ガラス「ネオセラムN-0」でした。なにしろ、防火扉の最善は鉄製、乙種防火戸(現 防火設備)用ガラスは網入りガラス、ガラスブロックしかなかった当時のこと、網がないガラスの乙種防火戸認定品「ネオセラムN-0」の登場は画期的。「こんなガラスがあるのか!?もっと建築に使えるのではないか!?」と、驚きをもって設計・建築関係者に迎えられました。ガスバーナーで800℃まで熱した直後に冷水を浴びせても割れないという耐熱衝撃性を示すデモンストレーションも大人気。「建設大臣賞」の受賞は、その性能・特長が評価された証でした。 「ネオセラムN- 0」の登場は、乙種防火戸の大臣認定試験にも影響を及ぼしたと考えられます。それまで鉄、網入りガラス、ガラスブロックのみが対象だった認定試験ですが、そこへ防火戸に対応できる“ガラス”の試験が新設されたのです。また、「防火区画に使いたい」という設計者の声が、日本電気硝子と鋼製扉・サッシメーカーとの協業を促進し、ガラス単体では成し得なかった甲種防火戸(現 特定防火設備)の個別認定も1991年4月に取得。甲種・乙種防火戸認定品となることで設計・建築業界からさらなる支持を受け、活躍の場が一層広がっていきました。なお、当初は「ネオセラムN-0」の名称で試験販売していましたが、’88ジャパンショップでの反響の大きさから、同年10月にファイアライトRと新たに命名し、建築用ガラスとして認知されるようになりました。急熱急冷に強い「結晶化ガラス」の登場。60分間の遮炎性能が求められる特定防火設備認定試験の様子。’88ジャパンショップで授与された建設大臣賞の賞状。業界を動かしたファイアライトRの革新性。14