ブックタイトル環KAN建材ニュース80

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概要

環KAN建材ニュース80

House and Restauran(t 山口県) みんながいろいろなことを考えて情報を共有できる現代は、強いコンセプトやキャラクターを打ち出してかたちにすること自体は、割と簡単だと思います。僕がやっているのは、強いコンセプトやキャラクターを薄く広げていくような作業――いわば「調整」です。個性の核となる部分を残しつつ、外に露出するコンセプトを消していくことに、かなりのエネルギーを注ぎ込みます。たとえば、黄色がコンセプトの場合、黄色という個性を表に出すのは誰にでもできること。僕の仕事は「黄色の何が重要か?黄色の本質は?」を考えて、それを外に見えないようにしつつ、黄色のいちばん重要なところを内側に残してあげることです。始めから黄色というコンセプトを外に出しすぎると、黄色が嫌いな人からはその段階で拒絶されてしまう。最初の段階ではコンセプトを消して、かつ本質的なところは残しておくことで、知らないうちに受け入れてくれる人を増やそうというわけです。 強い力で何かを一気に変えていく時代ではないから、「浸透させていく」ことがすごい力になると思う。拒絶される壁・バリアをなくして、いつの間にか内部に取り込まれているような状況をつくるのが理想です。たとえばコンピュータだと、以前は分厚いマニュアルを読まないと使えなかったのが、今は読まなくても感覚的に使える。それも、浸透です。バリアを外していって、使う人の特別な努力や好奇心がなくても、デバイスが持つ個性・機能・性能は十分に発揮されるようにする。意識せずとも――というのが、浸透では重要だと思っています。 建築の材料はなかなか難しい。個人的にはどんなものでも建築がつくれたらいいと思うけど、建築基準法ではそうではなく、構造材だと結局は鉄と木とコンクリートぐらいしか使えませんよね。近代以降はガラスと建築とは切っても切れないものですが、装飾的な仕上げ材ではなくて、建物を成立させるものになってほしい。建築物の重要な部分を成立させているのは構造だから、構造材としてガラスが使えるといいですね。ガラスの建物を考える時、本来ならばガラスだけでできているのが理想です。建築の成り立ちとしても、ガラスだけでできているという「純粋性」と、ガラスの空間であるという「特性」が強く表現できると思うので。しかし、現状は鉄骨やコンクリートといった一次部材が構造材として入らざるを得ない。燦々とした太陽の光を採り入れるとか、周囲の景色を内側の空間として採り込むとか、ガラスには大切な役割がある。さらに構造材としての可能性が広がれば、新しい建築に結び付いていくはずです。コンセプトの存在感を薄める「調整」に注力。建築物を成立させる構造としてのガラスに期待。05 KAN80