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2025.05.15

デンキガラス建築探訪

ファイアライト採用例:アイビス千駄ヶ谷

商住混在の都心部で前面道路が狭く、容積率160%という厳しい条件にも関わらず、十分な収益性が期待できるテナント空間を1-2階に、開放的で快適なオーナー様の住居を3-4階に配置した事務所併用住宅「アイビス千駄ヶ谷」。
法規をクリアすれば高さ20mまで建築可能な点に着眼し、さらに複雑な日影規制に従いつつ最大限のボリュームを追求して、1階から4階まですべて異なる床形状で構成しています。各階ボリュームをずらしたことでそれぞれの階に外部空間が生まれ、さらに室内との一体化で延床面積以上の広さが感じられます。
元々ゆとりある庭付き戸建て住宅にお住まいだったオーナ一様は、都心での生活空間に懸念されていましたが「アイビス千駄ヶ谷」は、建て込んだ立地でも緑を身近に感じられる暮らしが叶った好例。テナントと住宅では用途・機能ともまったく違う点を逆に活かし、建築のアイデンティティとして存在感を示しています。

外窓に使うことで
可能性の広がりを感じさせる
ファイアライト®。

「アイビス千駄ヶ谷」は全開放の引き込み窓にしてリビングとテラスを一体化し、屋外も生活空間として使えるように工夫しています。また、テナント部分も普通のオフィスでは難しい階高約4.5mと高さのある開放的な空間を重視しました。競合物件と差別化することで収益性の向上につながっています。
大きな課題となったのは開口部の防火対応で、当物件は防火設備が必要な立地。I-2階をできるだけガラス張りにするために最大サイズや価格を調べたのですが、金属サッシでは困難でした。また一方で、アルミサッシの窓が並ぶ建物はいかにも日本的な景観だと感じていました。

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[ 1 ] 2階テナントでも約3.9mの天井高を確保。内開きと内倒し、2つの開閉機能を持つドレーキップ窓の連窓から自然光がたっぷりと差し込む。
防火設備が必要な都市部の建物に、ファイアライトは性能面・意匠面ともにクリアする。
[ 2 ]「3-4階の住居からは固辺建物の屋根しか見えません。街中にあって建物の上には広々とした空が広がる。そのことを最大限に活用しました」(設計:小室 舞氏)
[ 3 ][ 4 ] 各階のポリュームをずらすことで下の階の庇になったり、上の階のテラスや庭になったりなど外部空間を生み出している。


を全開放し
リビングとテラスを一体化

そこに個別認定を取得して高さ3mの大開口にも対応できる、アルスの木製サッシ「夢まど」を見つけたのです。
個人的に網入りガラスがどうしても好きになれず、網のないファイアライト®が使用されていたのも好都合でした。

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[ 5 ] ファイアライトの高窓がリビングダイニングに自然な光をもたらす。
[ 6 ] 4階のリビングダイニングは階高を高くして天井を斜めにすることで、北側から自然光を採り入れている。

当初はテナント部分での採用のみ考えていましたが、3-4階の住居部分の一部も防火設備にする必要があったことから自然な流れで「夢まど」を使うことにしました。防火設備とそれ以外の窓を比べても、見分けがつかないほどの自然な仕上がりに満足しています。

取材協力/KOMPAS 小室 舞様


アイビス千駄ヶ谷(東京都)

建築設計:KOMPAS
施  工:大原工務所
竣  工:2021年
写  真:Vincent Hecht(2, 5)、大丸剛史(1, 3, 4, 6)
使用製品:ファイアライト(アルス社 夢まど)

※本記事は「環83号(2022年発行)」の記事を一部修正のうえ再掲したものです。
※本誌はこちらからご覧いただけます。
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