八角形の遊戯棟と教会建築が融和する
カトリックの風景

道後聖母幼稚園はモンテッソーリ教育を実践するミッションスクールです。園舎の老朽化により、建て替え工事が行われました。仮園舎を確保する敷地がないことから既存の園舎の一部を使いつつ、南側の園庭に新しい園舎を建てることを計画。新園舎が完成した後に北側にある既存の園舎を取り壊して園庭にするため園舎の影にならないよう平屋とし、２階部分は午前中の光が入るような形に設計しました。さらに、隣接する教会のゴシック様式を意識したシンボリックな建物として、八角形の遊戯棟を提案しました。

緑の芝が映える園庭と園舎。中央のシンボルツリーは熊本の阿蘇から取り寄せたこだわりよう。
冬は飾りつけてクリスマスツリーにするなど、子供たちに本物を体験させたいという思いが詰まっている。

八角形は日本建築でこれまでにも多く使われてきましたが、西洋でもキリストの復活８日前に使徒・聖トマスが現れたことなどから "８" は復活の象徴とされ、聖堂や洗礼堂に八角形が使われています。２階の保育室の屋根も象徴的に扱い、多様な屋根が重なる美しい園舎が完成しました。また、芝生の園庭に面したアーチの回廊や屋外階段の鐘楼、シンボルツリー、マリア像などを設けたことで、親しみやすいカトリックの風景になったと思います。

セラミックカラーガラスブロックで星座を表現した遊戯室。ドーム型の天井が宇宙の雰囲気を演出。
自然の風を通すために、ガラスブロックの間の壁は、開閉できるガラス戸に。

壁に映し出されるガラスブロックの星座で
子供たちの感性を養う

八角形のシンボリックな建物は交通量の激しい道路沿いに位置しています。２階の遊戯室は園児や先生全員が入ってお話やイベントができる広さがあります。そこで、みんなが心地よく過ごせるように、光を取り込みながらも外部の視線や音を遮るガラスブロックを採用しました。コーナーには自然通風ができる窓を設けています。

ただガラスブロックを使うのではなく、カラーガラスブロックを使って「子供たちが興味を持つもの、楽しめるものが表現できないか」と考えていました。「いいアイデアはないか」と図書館の子供コーナーに出向いて調べているうちに、地球や宇宙の神秘の図鑑に魅かれ、四季の星座を表現することにしました。

入口を除く７つの面にわかりやすい形の季節の星座を選び、できるだけ星座が現れる方位と同じ位置に配置しました。
オレンジのガラスブロックは一等星、濃いブルーは一等星以外の星、薄いブルーは星座の形を補足するための図鑑の絵の模様の役割です。光の当たる角度で見え方が変わるため、太陽の動きとともに星座が消えたり浮き彫りになったりと、まるで本当の星空のような雰囲気があります。

子供たちがこの星座を見てお互いに話をしたり、図鑑を見たりと、知らず知らずのうちに興味を持ってほしいと思います。また、遊戯室の照明は調光・調色できるので、様々なシーンを演出できます。日没後はガラスブロックを通して、多彩な色による印象的な光を周辺に灯すことができます。

1／南面。左上から時計回りに、こいぬ座・オリオン座・おおいぬ座・冬の大三角形
2／南西面。アンドロメダ座（左）・ペガサス座（右）・ペガサスの大四辺形　
3／西面。さそり座と南斗六星（いて座）　
4／北西面。上から時計回りに、はくちょう座・こと座・わし座・夏の大三角形　
5／北面。中央に北極星、左から時計回りに、カシオペア座・北斗七星（おおぐま座）・こぐま座　
6／北東面。左上から時計回りに、北斗七星（おおぐま座）・おとめ座・うしかい座と、春の大曲線　
7／東面。上から時計回りに、ふたご座・オリオン座・こいぬ座
※画像をクリックすると別ウィンドウで拡大します。

かかわった全員が
子供たちのためにアイデアを出しあった

今回の計画では、設計段階から施工時もロザリオ学園、松本園長、鳳建築設計事務所、門屋組と入念な打ち合せを行い、子供たちの感性を育むような工夫を凝らしています。「子供たちに本物の空間を触れさせたい」という学園の考えから子供っぽさを無くし、素材感のあるタイルや打ちっ放しのほか、室内は木を多く使うなどして落ち着いた空間に仕上げました。

階段を吹き抜けとして、ホールから２階の図書コーナー、遊戯室、園庭や屋上広場へと子供の活動の場を立体的に広げています。
家具、絵画、彫刻、サイン、シンボルツリーなどが随所に置かれ、建築に関わったみんなのアイデアが込められた園舎となりました。

取材協力／大山博建築設計事務所 大山 博様

学校法人ロザリオ学園 道後聖母幼稚園（愛媛県）

企画・監修：大山博建築設計事務所
設計・監理：鳳建築設計事務所
施　　工：門屋組
竣　　工：2021年
使用製品：ガラスブロック カスミ190角、カスミ・セラミックカラー（スカイブルー、ブルー、オレンジ）190角、フロスト プレーン190角

※本記事は「環84号(2023年発行)」の記事を一部修正のうえ再掲したものです。
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