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2025.08.01

ガラスのネタ帳

大阪・関西万博とデンキガラス ー 新森雄大氏「休憩所4」

既に多くのメディアで情報は溢れていますが、私たち電気硝子建材も独自の切り口で万博を取りあげてみるこの企画。その名も「大阪・関西万博とデンキガラス」!
今回の万博には大御所から若手まで多数の建築家やデザイナーが関わっておられますが、その中に、日本電気硝子が主催、電気硝子建材が共催した「空間デザイン・コンペティション」に若かりし頃に入賞された方や、審査委員を務めてくださった方などが多々おられるのです。
時を経て、その方々がこの万博でどんな作品を手掛けられたのか‥などなどレポートしていきます。


第4回目は、建築家・新森雄大氏をご紹介します。
第17回空間デザイン・コンペティション(2010年)提案部門にて優秀賞を受賞されており、
大阪・関西万博では若手20組* の1組、服部大祐 + 新森雄大(一級建築士事務所 Schenk Hattori + Niimori Jamison)として「休憩所4」を手掛けられました。
* "若手20組"とは‥ 万博会場内の共用施設(トイレ、休憩所、展示施設など)を設計した主に30代〜40代前半の若手建築家20組のこと。公募型プロポーザル方式にて256事業者の中から、審査員3名(藤本壮介氏・平田晃久氏・吉村靖孝氏)の評価を受けて選定されました。

※第1回目の記事「大阪・関西万博とデンキガラス ー藤本壮介氏」はこちら
※第2回目の記事「大阪・関西万博とデンキガラス ―平田晃久氏」はこちら
※第3回目の記事「大阪・関西万博とデンキガラス ―工藤浩平氏」はこちら

ぽこぽこと連なる緩やかな丘の上にそっと掛かっているのは、鉄筋でつくられた波のような約30メートル四方のメッシュ状の屋根。コモンズAの隣り、「静けさの森」の北東側に位置する「休憩所4」は、森に隣接している立地を上手に活かした、広場を内包した施設です。

IMG_7927_s.jpg筆者がこちらを訪れたのは4~6月のあいだでしたが、昼間はカメラを構えるのをためらうほどの大人気で、青空の下で子どもたちは遊びまわり、大人もゆるゆる過ごしていました。なだらかな丘とメッシュの屋根のあいだに、開放感があるにも関わらずなぜか秘密基地っぽい空間が生まれていること、そして、どこに座っても登っても寝転んでもいい、好きに過ごしていいと自由を許されたように感じさせる場所だからかなと個人的に思いました。

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実はこの広場は、『埋立地ゆえ地盤が弱く、建物を建てる場合、同じ重量の土を掘削して破棄する必要がある』という敷地要件を逆手に取ったアイデアから成っています。つまり、敷地に谷を掘って山を造成→ その山と谷が交互に連なる地形を形成→ 地形を型どって同じ形の鉄筋メッシュを成形→ 反転させて、山の頂点にメッシュの谷底部分を設置→ 憩いの空間の誕生、というわけです。

太陽が格子状の影を映し出し、丘の斜面がその影のかたちを歪めながら刻々と変化させていくのは眺めていて面白く、時の"うつろい" を実感させてくれます(真夏では暑すぎて厳しいですが‥)。
暮れなずむ頃には表情が一変し、どこか砂丘にいるように幻想的に思えるのも、照明がメッシュ状の屋根に光の輪郭を与えてくれるのも興味深いです。

「休憩所」という名称から想像するものを良い意味で裏切ってくれる「休憩所4」。
建築と風景のあいだにふわりと浮かぶこの施設に、ぜひ一度足を運んでみてください!

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休憩所4(静けさの森ゾーン)

設計:服部大祐+新森雄大 / Schenk HattoriNiimori Jamison


新森雄大(にいもり・ゆうだい)

1986年徳島県生まれ。滋賀県立大学大学院人間文化学研究科、スイス・イタリア大学大学院メンドリジオ建築アカデミー修了後、2018年Niimori Jamisonを共同設立。京都芸術大学非常勤講師(2022~)、京都市立芸術大学 非常勤講師(2023~)、名古屋造形大学 特任准教授(2025~)。

主な作品:pedestals(2024)、garden(2025)、perch(2025)
主な受賞:Shortlist | City of Ballarat Continuous Voices Memorial (2024)、JIA関西建築家新人賞(2025)

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