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2025.08.22

ガラスのネタ帳

大阪・関西万博とデンキガラス ー 隈 翔平氏「トイレ6」

既に多くのメディアで情報は溢れていますが、私たち電気硝子建材も独自の切り口で万博を取りあげてみるこの企画。その名も「大阪・関西万博とデンキガラス」!
今回の万博には大御所から若手まで多数の建築家やデザイナーが関わっておられますが、その中に、日本電気硝子が主催、電気硝子建材が共催した「空間デザイン・コンペティション」に若かりし頃に入賞された方や、審査委員を務めてくださった方などが多々おられるのです。
時を経て、その方々がこの万博でどんな作品を手掛けられたのか‥などなどレポートしていきます。


第5回目は、建築家・隈 翔平氏をご紹介します。
第14回空間デザイン・コンペティション(2007年)提案部門にて佳作を受賞されており、
大阪・関西万博では若手20組* の1組、KUMA&ELSA として「トイレ6」を手掛けられました。

* "若手20組"とは‥ 万博会場内の共用施設(トイレ、休憩所、展示施設など)を設計した主に30代〜40代前半の若手建築家20組のこと。公募型プロポーザル方式にて256事業者の中から、審査員3名(藤本壮介氏・平田晃久氏・吉村靖孝氏)の評価を受けて選定されました。

※第1回目の記事「大阪・関西万博とデンキガラス ー藤本壮介氏」はこちら
※第2回目の記事「大阪・関西万博とデンキガラス ―平田晃久氏」はこちら
※第3回目の記事「大阪・関西万博とデンキガラス ―工藤浩平氏」はこちら
※第4回目の記事「大阪・関西万博とデンキガラス ―新森雄大氏」はこちら

まるでパビリオンや休憩所のような佇まいに、「あれ、ここってなに?」と会場で思った方もおられるのではないでしょうか。最大高さが約10mの三角形の、木でできた建物。「静けさの森」ゾーン、そして先にご紹介した「休憩所4」とアゼルバイジャンパビリオンの間に位置する「トイレ6」は、登って自由に時間を過ごすことができるちょっとした穴場の施設です。

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筆者が訪問した5月や6月は、たくさんの人がこの階段でリラックスした時間を過ごしていました。風通しが良く、「静けさの森」も見渡せる心地よい場所です(今は猛暑で陽射しが強く、そういうわけにもいかないでしょうか‥)。

建物外観は現し仕上げの木材で構成され、素朴で温かみが感じられます。内部はラフでありながら清潔感のある空間に仕上がっていて、ふわっと香る木の香りに癒されます。天井からの光に柔らかく照られされた柱列や、手洗いカウンターの長さなども印象的(串団子のように連なったラウンド形のミラーもキュートです)。

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トイレ内部から出口へと続く道から外へと出ると、人々はまず小さな池と小島から伸びる一本の木を目にします。そこで振り返ると自分の来た出口の両サイドには階段があり、それがトイレの屋根であることに気がつきます。

このユニークな構造は、訪れる人にさらなる驚きと楽しさを与えてくれます。
実はこの屋根全体が、水の循環を体感できる装置として設計されているのです。たとえば、池に集められた雨水は機械室の貯留池に取り込まれ、トイレの排水や屋根の散水に再利用されます。屋根に敷かれた砂利は水を吸収し、その蒸発時に建物の熱を逃がしてくれます。

WEBKAN_D_kuma2_2.jpg建築デザインと機能性を両立させているだけではなく、建物の造形・素材への配慮・水の循環プロセスなど、小さな施設の中にたくさんのテーマが詰まっています。


「トイレに来たはずなのになぁ‥笑」と言いながら、ちょっと足を止めてくつろいでしまう、そんな万博ならではの体験型トイレ、「トイレ6」(筆者もかなりゆっくりさせていただきました笑)。
真夏の時期には、日没後の過ごしやすい時間帯に階段に腰をおろして風を感じたり、目の前に広がる森の気配に耳を澄ませたりして過ごすのも素敵かもしれません。ぜひ一度足を運んでみてください!

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トイレ6(静けさの森ゾーン)

設計:KUMA&ELSA


隈 翔平(くま・しょうへい)

1983年福岡県生まれ。2007~14年 MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO勤務。2017年 ミラノ工科大学大学院修了。
2018年よりKUMA & ELSA共同主宰(フランス、日本)。現在、九州大学、IED Kunsthal(スペイン)非常勤講師。

主な作品:One Water(2025), House by the temple(2024), Yamada house(2020)
主な受賞:住宅建築賞 奨励賞、SDレビュー2019入選、Le Festival des cabanes 2018(フランス)入賞

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